新リース会計基準で変わる財務諸表!今すぐ始めるべき準備とポイント

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「新リース会計基準」の導入は、企業の財務諸表に大きな変革をもたらします。本記事では、この基準がなぜ求められるのかという背景から、貸借対照表における「使用権資産」と「リース負債」のオンバランス化、損益計算書やキャッシュフロー計算書への具体的な影響まで、分かりやすく解説。自己資本比率などの財務指標への影響を把握し、早期に対応するための「既存リース契約の洗い出し」「会計処理方針の策定」「会計システムの選定」といった具体的な準備ステップを提示します。IFRS16号との比較や中小企業への影響も踏まえ、貴社が今すぐ取り組むべきポイントと、スムーズな移行を実現するための道筋が明確になるでしょう。

目次

新リース会計基準とは何か 導入の背景と目的

新リース会計基準 導入の背景と概要 求められる3つの理由 1 経済実態の適切な反映 オフバランスからオンバランスへ 2 国際的な会計基準との調和 IFRS16号への追随・比較可能性向上 3 透明性と比較可能性の向上 負債水準の明確化と企業間比較の公平化 適用時期と対象企業 適用時期 2024年4月1日以後 開始事業年度から 対象企業 原則としてすべての企業 (上場企業、大会社など) ※中小企業は当面、現行処理継続の特例あり 例外・簡便処理 少額リース・短期リースは簡便処理が可能

2024年4月1日以後開始する事業年度から、日本においても新たなリース会計基準が適用されます。これは、企業がリース取引を行う際の会計処理を大きく変更するものであり、従来の基準と比較して、企業の財務諸表に与える影響は少なくありません。この新しい基準は、国際的な会計の流れに沿い、企業の経済実態をより正確に財務諸表に反映させることを目的としています。

具体的には、これまでオフバランス処理が可能だったリース取引の一部が、原則として企業の貸借対照表に資産と負債として計上されることになります。これにより、企業の財政状態や経営成績がより透明性の高い形で開示され、投資家や債権者などの利害関係者が企業の状況をより正確に把握できるようになることが期待されています。

新リース会計基準が求められる理由

新リース会計基準が導入される背景には、主に以下の三つの重要な理由があります。

第一に、企業の経済実態を財務諸表に適切に反映させる必要性が高まったことです。従来の会計基準では、オペレーティングリース契約の場合、リース資産とリース負債が貸借対照表に計上されず、いわゆる「オフバランス」の状態でした。しかし、リース契約は実質的に資産の利用権と、その対価を支払う義務という負債を企業にもたらします。この経済実態と会計処理の乖離を解消し、企業の真の財政状態をより正確に開示することが求められました。

第二に、国際的な会計基準との調和が挙げられます。国際会計基準(IFRS)では、すでに「IFRS16号リース」として、原則すべてのリース取引をオンバランス処理する基準が導入されています。日本基準もこれに追随することで、国際的な企業の財務諸表の比較可能性を高め、グローバルな投資家にとってより理解しやすい情報を提供できるようになります。これは、日本企業の国際競争力を維持・向上させる上でも重要な要素となります。

第三に、財務諸表の透明性と比較可能性の向上です。従来の基準では、リース取引のオフバランス処理により、企業の負債水準が実際よりも低く見えたり、同業他社との間でリース利用の多寡によって財務諸表の比較が困難になるという課題がありました。新基準の導入により、リース取引が貸借対照表に計上されることで、企業の負債の実態がより明確になり、異なる企業間の財務状況を公平に比較できるようになります。

新リース会計基準の適用時期と対象企業

新リース会計基準は、原則として2024年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用されます。例えば、3月決算の企業であれば、2025年3月期から適用が開始されることになります。ただし、基準の公表から適用開始までの期間において、早期適用を選択することも可能です。

この新基準の適用対象は、原則としてすべての企業です。具体的には、上場企業やその子会社・関連会社はもちろんのこと、会計監査が義務付けられている大会社なども対象となります。

一方で、中小企業については、当面の間、現行の会計処理を継続できる特例措置が設けられています。これは、新基準への移行に伴う実務的な負担を考慮したもので、中小企業の経営状況や会計処理体制に応じて、段階的な対応を促すための配慮と言えます。ただし、将来的に中小企業にも新基準が適用される可能性は十分にあり、特例が適用される企業であっても、新基準の内容を理解し、将来的な対応を検討しておくことが重要です。

また、重要性の乏しいリース取引(少額リースや短期リース)についても、簡便な会計処理が認められる場合があります。これは、すべてのリース取引を厳密にオンバランス処理することによる実務上の負担を軽減するための措置であり、企業規模に関わらず適用が可能です。

新リース会計基準が財務諸表に与える影響

新リース会計基準が財務諸表に与える影響 貸借対照表 (B/S) 【旧基準】オフバランス リース資産・負債の計上なし 【新基準】オンバランス 資産総額・負債総額の増加 + 使用権資産 (固定資産) + リース負債 (固定/流動負債) 財務指標への影響 自己資本比率 ▼ 低下 D/Eレシオ ▲ 上昇 ROA (総資産利益率) ▼ 低下 損益計算書 (P/L) 【旧基準】一括費用処理 賃借料 (営業費用) / 定額 【新基準】費用の分解 減価償却費 + 支払利息 営業費用 + 営業外費用 (初期に費用が多い逓減型) 利益指標への影響 営業利益 ▲ 増加傾向 経常利益 ー 不変 EBITDA ▲ 増加 キャッシュフロー (C/F) 【旧基準】営業C/Fのみ リース料全額が営業C/F 【新基準】表示区分の変更 財務C/F + 営業C/F 元本返済部分 → 財務C/F 利息支払部分 → 営業C/F C/F指標への影響 営業C/F ▲ 改善(増加) 財務C/F ▼ 悪化(減少) フリーC/F ▲ 増加

2023年度から適用される新リース会計基準は、企業の財務諸表にこれまでになかった大きな変化をもたらします。特に、賃貸借契約の一種であったオペレーティングリース契約が、貸借対照表に計上される「オンバランス化」がその中心です。これにより、企業の資産・負債の状況、損益計算書における費用の内訳、そしてキャッシュフロー計算書の表示区分まで、広範囲にわたる影響が生じます。

貸借対照表の変動 使用権資産とリース負債

新リース会計基準の導入により、貸借対照表は最も大きな影響を受ける部分の一つです。特に、従来のオペレーティングリース契約も原則として貸借対照表に計上される「オンバランス化」が義務付けられるため、企業の財務体質が大きく変化する可能性があります。

オンバランス化による資産負債の増加

新基準では、すべてのリース契約(短期リースや少額リースを除く)について、リース資産(「使用権資産」)とリース負債を貸借対照表に計上することが求められます。これは、企業がリース物件を実質的に支配しているという考え方に基づいています。これまでオフバランス処理されてきたオペレーティングリース契約も、賃貸借契約であるにもかかわらず、固定資産(使用権資産)と固定負債(リース負債)として計上されることになります。

このオンバランス化により、企業の貸借対照表には以下の勘定科目が新たに、または増額されて計上されます。

  • 使用権資産:リース物件を使用する権利を表す資産として、有形固定資産または無形固定資産に準じて計上されます。
  • リース負債:リース料の支払義務を表す負債として、その割引現在価値が計上されます。

結果として、企業の資産総額と負債総額が同時に増加することになります。これは、これまで資産として認識されていなかったリース物件の利用実態が、財務諸表に明確に反映されることを意味します。

自己資本比率など財務指標への影響

オンバランス化による資産と負債の増加は、企業の財務指標に直接的かつ重要な影響を及ぼします。特に、企業の安全性や健全性を示す指標に変化が生じます。

財務指標 新リース会計基準による影響 理由
自己資本比率 低下 負債(リース負債)が増加するため、総資産に対する自己資本の割合が減少します。
D/Eレシオ(負債資本倍率) 上昇 負債(リース負債)が増加するため、自己資本に対する負債の割合が増加します。
ROA(総資産利益率) 低下 資産(使用権資産)が増加するため、利益が同水準であれば総資産に対する利益の割合が減少します。
流動比率 変動の可能性あり リース負債のうち、1年以内に返済期限が到来する部分は流動負債に計上されるため、流動負債が増加し、流動比率に影響を与える可能性があります。

これらの指標の悪化は、企業の信用格付けや金融機関からの借入条件に影響を与える可能性があります。投資家や債権者は、財務諸表から企業の真の負債水準をより正確に把握できるようになるため、企業の資金調達戦略やM&A戦略にも影響を及ぼすことが予想されます。

損益計算書における費用の変化

新リース会計基準は、損益計算書における費用の計上方法にも大きな変更をもたらします。特に、従来のオペレーティングリース契約の費用処理が大きく変わります。

減価償却費と支払利息の計上

これまでのオペレーティングリースでは、リース料が「賃借料」などの名目で一括して費用計上されていました。しかし、新基準では、オンバランス化された使用権資産とリース負債に関連して、以下の2つの費用が計上されることになります。

  • 使用権資産の減価償却費:使用権資産は固定資産と同様に、その耐用年数(またはリース期間)にわたって減価償却されます。これは、主に営業費用として計上されます。
  • リース負債に係る支払利息:リース負債の利息相当額が、支払利息として計上されます。これは、主に営業外費用として計上されます。

この結果、従来のリース料が一括で費用計上されていたのに対し、新基準では「減価償却費」と「支払利息」に分解されて計上されることになります。特にリース期間の初期には、利息費用が大きく計上されるため、費用が逓減的に発生する傾向が見られます。これは、定額で費用計上されていた従来のオペレーティングリースとは異なる特徴です。

リース料の費用処理の変更点

従来のリース会計基準では、オペレーティングリースとファイナンスリースで費用処理が大きく異なりました。オペレーティングリースは賃借料として費用計上(オフバランス)、ファイナンスリースは減価償却費と支払利息に分けて計上(オンバランス)されていました。

新基準では、原則としてすべてのリース契約がファイナンスリースに準じた処理となるため、オペレーティングリースの費用処理が大きく変更されます。この変更点を以下の表で整理します。

項目 旧基準(オペレーティングリース) 新基準(原則)
費用科目 リース料(賃借料) 減価償却費、支払利息
費用計上額の推移 リース期間中、ほぼ定額 リース期間初期に費用が多く、後期に少なくなる逓減型
費用計上区分 営業費用 減価償却費は営業費用、支払利息は営業外費用
EBITDAへの影響 リース料が営業費用に含まれるため、EBITDAを減少させる 減価償却費と支払利息はEBITDA計算の調整項目となるため、EBITDAが増加する傾向

この変更により、損益計算書上では、営業利益は減価償却費の影響を受け、経常利益は支払利息の影響を受けることになります。特に、EBITDA(税引前・利払い前・減価償却費償却前利益)は増加する傾向にあるため、EBITDAを重視する企業評価や投資判断に影響を与える可能性があります。

キャッシュフロー計算書への影響

新リース会計基準は、キャッシュフロー計算書(C/F)にも影響を及ぼします。特に、リース料の支払いに関する区分が変更される点が重要です。

従来のオペレーティングリースでは、リース料の支払いは全額が営業活動によるキャッシュフロー(営業C/F)に計上されていました。しかし、新基準では、リース負債の返済部分と利息部分に分解されるため、キャッシュフロー計算書での表示もそれに合わせて変更されます。

  • リース負債の元本返済部分:これは借入金の返済と同様に、財務活動によるキャッシュフロー(財務C/F)に計上されます。
  • リース負債の利息支払い部分:利息の支払いは、原則として営業活動によるキャッシュフロー(営業C/F)に計上されますが、企業によっては財務活動によるキャッシュフローに計上することも認められています。

この変更により、従来のオペレーティングリース契約が多かった企業では、営業活動によるキャッシュフローが改善し、その分、財務活動によるキャッシュフローが悪化する傾向が見られます。これは、営業キャッシュフローが本業の稼ぐ力を示す指標であるため、企業の資金創出力に対する見方が変わる可能性があります。

また、このキャッシュフロー計算書の変更は、フリーキャッシュフロー(営業活動によるキャッシュフローから投資活動によるキャッシュフローを差し引いたもの)の計算にも影響を与えます。リース負債の元本返済部分が財務活動に移動することで、見かけ上のフリーキャッシュフローが増加する可能性があります。企業の実態を正確に把握するためには、これらの変更点を踏まえた分析が不可欠となります。

新リース会計基準への対応 今すぐ始めるべき準備

既存リース契約の洗い出しと情報収集

新リース会計基準へのスムーズな移行には、まず自社が締結しているすべてのリース契約を正確に把握することが不可欠です。これには、これまでオフバランス処理されてきたオペレーティングリース契約も含まれます。

洗い出しの対象は、不動産、車両、機械設備、IT機器など、あらゆる資産に関するリース契約です。これらの契約書を一つ一つ確認し、以下の情報を漏れなく収集する必要があります。

情報項目 詳細内容 重要性
リース契約の開始日と終了日 リース期間を特定し、適用時期とオンバランス化の対象を判断します。 リース期間の特定は、使用権資産の減価償却期間およびリース負債の計算期間に直結します。
リース料の支払いスケジュールと金額 将来のキャッシュアウトフローを把握し、リース負債の現在価値計算の基礎となります。 支払利息と元本の区分、キャッシュフロー計算書への影響を算定するために不可欠です。
残価保証の有無と金額 残価保証が付されている場合、リース負債の算定に影響を与えます。 リース負債の評価額を正確に決定するために重要です。
購入オプション、解約オプションの有無と条件 これらのオプションの行使可能性は、リース期間の決定やリース負債の評価に影響します。 リース期間の再評価や、リース負債の増減に影響を与える可能性があります。
リース契約に含まれるサービス料の分離 リース料の中に保守費用などのサービス料が含まれている場合、これをリース要素と非リース要素に分離する必要があります。 リース負債と使用権資産の計算から、非リース要素を除外するために必要です。
割引率の特定 リース料の現在価値を計算するための割引率(借入金利など)を特定します。 リース負債の金額を大きく左右する重要な要素です。

これらの情報収集は、リース負債と使用権資産を正確に算定するための出発点となるため、非常に重要です。契約書の確認だけでなく、リース会社からの情報提供も積極的に求め、不明点を解消していく必要があります。

会計処理方針の策定と社内体制の構築

洗い出したリース契約情報に基づき、新基準に則った具体的な会計処理方針を策定することが次のステップです。これには、リース負債の算定方法、使用権資産の減価償却方法、割引率の決定基準、重要性の判断基準などが含まれます。

特に、以下の点について明確な方針を定める必要があります。

  • リース期間の決定方法(購入オプションや解約オプションの考慮)
  • リース負債の現在価値計算に用いる割引率の選定(借入金利、インクリメンタル借入利率など)
  • 使用権資産の減価償却方法と耐用年数
  • リース要素と非リース要素の分離基準
  • 重要性の原則に基づく簡便法の適用可否と範囲

また、これらの会計処理を適切に実行し、継続的に管理していくためには、社内体制の構築が不可欠です。経理部門だけでなく、事業部門、法務部門、IT部門など、関係部署との連携を強化し、役割と責任を明確にする必要があります。具体的には、以下の体制を検討します。

  • 新リース会計基準対応プロジェクトチームの設置
  • リース契約情報の定期的な更新・管理プロセスの確立
  • 従業員への新基準に関する教育・研修の実施
  • 会計システムへの入力・運用ルールの策定

一貫性のある会計処理と正確な情報管理のためには、これらの社内体制の整備が成功の鍵を握ります。

会計システムの選定と改修

新リース会計基準の適用は、リース契約のオンバランス化に伴う会計処理の複雑化とデータ量の増加をもたらします。手作業での対応は非効率であり、誤りのリスクも高まるため、会計システムの選定または既存システムの改修が不可欠となります。

システムに求められる主な機能は以下の通りです。

機能項目 詳細内容 メリット
リース契約情報の集中管理 複数のリース契約を一元的に管理し、契約条件や支払いスケジュールを把握します。 情報の散逸を防ぎ、必要なデータへのアクセスを容易にします。
リース負債・使用権資産の自動計算 契約情報と割引率に基づき、リース負債の現在価値、使用権資産の取得原価を自動で計算します。 計算ミスのリスクを低減し、作業時間を大幅に削減します。
仕訳の自動生成 リース負債の利息費用、使用権資産の減価償却費、リース料の支払いなどに関する仕訳を自動で生成します。 経理処理の効率化と正確性を向上させます。
開示情報作成支援 財務諸表注記に必要なリース関連情報を集計し、レポートとして出力します。 開示資料作成の手間を省き、監査対応をスムーズにします。
リース契約の変更・解約への対応 リース契約の条件変更や解約があった場合に、会計処理を自動で修正・再計算します。 契約変更時の複雑な再計算を自動化し、常に最新の会計処理を維持します。

プロシップなどのリース会計システム活用

上記のような複雑な会計処理に対応するためには、専門のリース会計システムの活用が非常に有効です。例えば、国内で多くの企業に導入されているプロシップのリース会計システムは、新リース会計基準(日本基準)やIFRS16号に対応しており、リース契約の管理から会計処理、開示情報作成までを一貫してサポートします。

専門システムを導入する主なメリットは以下の通りです。

  • 専門知識の補完:複雑な会計基準の解釈や計算ロジックがシステムに組み込まれているため、専門知識が不足していても正確な処理が可能です。
  • 業務効率の向上:手作業による計算や仕訳作成が不要となり、経理担当者の負担を大幅に軽減します。
  • 正確性の確保:自動計算により、人為的なミスを排除し、会計処理の正確性を高めます。
  • 開示対応の支援:必要な開示情報を自動で集計・出力できるため、監査対応や情報開示の準備がスムーズになります。

システム選定にあたっては、自社のリース契約数、既存の会計システムとの連携、カスタマイズの必要性、導入コスト、ベンダーのサポート体制などを総合的に考慮し、最適なソリューションを選択することが重要です。

開示情報の準備と監査対応

新リース会計基準の適用に伴い、財務諸表の注記情報も大きく変更されます。投資家や利害関係者に対し、企業の財政状態や経営成績を適切に理解してもらうためには、充実した開示情報の準備が不可欠です。

開示情報には、主に以下の内容が含まれます。

  • リース負債の期末残高
  • 使用権資産の期末残高と減価償却費
  • リース負債の満期分析(将来のリース料支払いスケジュール)
  • 損益計算書に計上されたリース関連費用(減価償却費、支払利息、短期リース料、少額リース料など)
  • 簡便法を適用したリース契約に関する情報
  • リース活動に関するキャッシュ・フロー情報
  • 重要な会計方針(リース期間の決定方法、割引率の決定方法など)

これらの情報は、正確かつ網羅的に作成される必要があり、監査法人による厳格な監査の対象となります。監査対応をスムーズに進めるためには、以下の準備が求められます。

  • 開示資料の早期作成とレビュー:監査法人との事前協議を通じて、開示内容の妥当性を確認します。
  • 計算根拠資料の整備:リース負債や使用権資産の計算過程、割引率の決定根拠など、すべての計算資料を整理し、いつでも提示できるように準備します。
  • 監査法人との密な連携:新基準適用に関する論点や疑問点を早期に共有し、認識の齟齬がないようにコミュニケーションを図ります。

透明性の高い情報開示は、企業の信頼性を高める上で非常に重要であり、新リース会計基準への対応における最終的なゴールの一つと言えます。

新リース会計基準適用における注意点と課題

新リース会計基準適用における注意点と課題 中小企業への影響 1. 会計処理の複雑化 使用権資産とリース負債の認識・計算 2. システム投資の負担 会計システムの改修や新規導入が必要 3. 財務指標への影響 負債増加による自己資本比率の低下懸念 4. 簡便な会計処理の活用 短期リース(1年以内)や少額リースは 免除規定を活用し実務負担を軽減可能 ※適用には一定の条件あり IFRS16号 vs 日本基準 【 共通の原則 】 すべてのリース契約をオンバランス化 使用権資産とリース負債を認識 【 主な相違点(適用除外) 】 IFRS第16号 少額リース 概ね5,000米ドル以下 (具体的金額の明示) 日本基準 少額リース 重要性の原則に基づく (企業ごとの実情判断) 日本企業の実務に配慮しつつ、 国際基準との整合性を維持する方針

新リース会計基準の導入は、企業の財務報告に大きな透明性をもたらす一方で、実務上の多くの課題と注意点を企業にもたらします。特に、従来のリース取引のオフバランス処理に慣れていた企業にとっては、会計処理の変更だけでなく、経営戦略や資金調達、さらには情報システムの改修に至るまで、広範な対応が求められます

この章では、新基準が企業にもたらす具体的な影響の中でも、特に中小企業が直面する固有の課題と、国際的な会計基準であるIFRS16号との比較を通じて、日本基準の動向について詳しく解説します。

中小企業における新リース会計基準の影響

新リース会計基準は、上場企業だけでなく、一部の非上場企業にも適用されますが、特に中小企業にとっては大きな負担となる可能性があります。大企業に比べて会計処理体制やシステム投資にかけられるリソースが限られているため、以下の点に注意が必要です。

  • 会計処理の複雑化: リース契約ごとに使用権資産とリース負債を認識し、減価償却費と支払利息を計上する作業は、従来の賃貸借処理に比べて複雑です。専門知識を持つ人材の確保や育成が課題となります。
  • システム投資の負担: リース契約情報の管理、減価償却計算、利息計算などを効率的に行うためには、会計システムの改修や新たなリース会計システムの導入が必要となる場合があります。これは中小企業にとって大きな初期投資となり得ます。
  • 財務指標への影響: リース負債のオンバランス化により、自己資本比率の低下負債比率の悪化など、財務指標が悪化する可能性があります。これにより、金融機関からの評価や資金調達に影響が出ることも考えられます。
  • 簡便な会計処理の活用: 日本基準では、重要性の原則に基づき、短期リース(リース期間が1年以内)や少額リース(リース資産の価値が重要でないもの)については、簡便な会計処理が認められる場合があります。中小企業はこれらの免除規定を適切に活用することで、実務負担を軽減できます。ただし、その適用には一定の条件があるため、慎重な判断が求められます。

中小企業は、自社のリース契約の実態を正確に把握し、新基準適用による影響を早期に評価することで、適切な対応策を講じる必要があります。

IFRS16号との比較と日本基準の動向

日本における新リース会計基準(実務対応報告第44号)は、国際的な会計基準であるIFRS第16号「リース」をベースに策定されています。両基準は「すべてのリース契約を原則としてオンバランス化する」という共通の考え方を持っていますが、細部において異なる点も存在します。これらの違いを理解することは、グローバル企業や将来的な国際基準への収斂を見据える企業にとって重要です。

主な相違点と共通点

以下の表で、IFRS16号と日本基準(実務対応報告第44号)の主な特徴を比較します。

項目 IFRS第16号「リース」 日本基準(実務対応報告第44号)
原則 原則としてすべてのリース契約をオンバランス化 原則としてすべてのリース契約をオンバランス化
適用除外 短期リース(12ヶ月以内)と少額リース(概ね5,000米ドル以下) 短期リース(1年以内)と少額リース(重要性の原則に基づき判断)
認識・測定 使用権資産とリース負債を認識。リース負債はリース料の現在価値で測定。 使用権資産とリース負債を認識。リース負債はリース料の現在価値で測定。
損益計算書 減価償却費と支払利息を計上 減価償却費と支払利息を計上
開示 詳細な定量的・定性的な開示が求められる IFRS16号に準拠した詳細な開示が求められる

日本基準はIFRS16号の考え方を大幅に取り入れていますが、特に少額リースの定義簡便な会計処理の適用範囲において、日本企業の実情に合わせた調整がなされています。例えば、少額リースの閾値はIFRS16号のように具体的な金額が明示されておらず、重要性の原則に基づき個々の企業が判断することになります。

また、今後の動向としては、日本企業会計基準委員会(ASBJ)は、国際的な会計基準との整合性を維持しつつ、日本企業の実務に配慮した基準を策定していく方針です。したがって、将来的にさらなるIFRSへの収斂が進む可能性もあれば、日本独自の基準が維持される側面もあるため、企業は継続的に動向を注視する必要があります。特に、連結財務諸表を作成する上場企業においては、IFRSとの差異が与える影響を常に意識した対応が求められます。

まとめ

新リース会計基準は、企業のリース取引の財務実態をより正確に開示することを目的として導入されます。これにより、従来のオフバランス処理から、使用権資産とリース負債を計上するオンバランス処理へと変更され、貸借対照表の資産・負債が増加し、自己資本比率などの財務指標に大きな影響を与えます。損益計算書では、リース料が減価償却費と支払利息として認識されるため、費用の計上パターンも変化します。キャッシュフロー計算書にも影響が生じます。

これらの変更に適切に対応するためには、既存リース契約の洗い出し、会計処理方針の策定、会計システムの改修(プロシップなどの活用も有効)を早期に進めることが不可欠です。開示情報の準備と監査対応も重要なポイントとなります。中小企業も適用対象となる場合は影響を把握し、対応が求められます。国際会計基準(IFRS16号)との整合性も意識しつつ、本基準への対応は企業の透明性を高め、より正確な経営判断に繋がる重要なステップです。早めの準備と情報収集を徹底し、スムーズな移行を目指しましょう。

※記事内容は実際の内容と異なる場合があります。必ず事前にご確認をお願いします

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